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建築物省エネ法に違反すると罰則はどうなる?
知っておくべき4つの項目

建築物省エネ法に違反すると罰則はどうなる?知っておくべき4つの項目

コラム|建築物省エネ法に違反すると罰則はどうなる?知っておくべき4つの項目
コラム|建築物省エネ法に違反すると罰則はどうなる?知っておくべき4つの項目
日本国内で建築されるほぼ全ての建築物には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下、建築物省エネ法)」が適用され、基準に適合しない場合には罰則が科されます。

建築物省エネ法は、2015年の制定後、2021年、2022年と相次いで改正が行われ、社会情勢の変化に合わせて段階的に基準が強化されてきました。

そして2025年4月からは、これまで一部の建築物に限定されていた省エネ基準への適合義務が全面的に拡大され、罰則の適用もさらに厳格になりました。

建築物省エネ法に適合しない場合、行政処分や罰金の対象となれば、プロジェクトの頓挫や企業の信用失墜など、取り返しのつかない損失につながりかねません。

建築計画から引き渡しまでを円滑に進めるためにも、どのような行為が違反となり、どんな罰則が適用されるのか、事前に確認しておきましょう。
【2025年改正】建築物省エネ法の基本
【2025年改正】建築物省エネ法の基本

日本は、2020年10月にカーボンニュートラルを宣言し、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すことを表明しました。

目標達成に向け、エネルギー転換部門、産業部門、運輸部門といったあらゆる分野で、温室効果ガス排出量の削減が急務となっています。

この取り組みは、建築物分野も例外ではありません。JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)によれば、建築物分野における温室効果ガスの排出量は、業務その他部門(商業・サービス・事業所等)で16.7%、家庭部門で14.9%となっており、全体の約3分の1に当たります。(2023年時点)

このように建築物分野の温室効果ガス排出量は大きな割合を占めているため、早急な取り組みが求められているのです。

建築物分野で温室効果ガス削減を推進する中心的な役割を果たすのが、建築物省エネ法です。

同法は、2050年カーボンニュートラルおよび2030年度温室効果ガス46%削減目標(2013年度比)の実現を背景として2015年に制定され、特に2022年の改正法公布によりその規制はさらに強化されました。

そのため、建築物分野における省エネ化の重要性を踏まえ、建築物の省エネ性能向上を促進する法的基盤が整備されています。

― 建築物分野での省エネ対策と木材利用の促進

― 建築物分野での省エネ対策と木材利用の促進

建築物省エネ法の大きな目的は、建築物分野における省エネ対策の加速と、木材利用の促進です。
建築物分野における省エネ対策の加速と木材利用の促進
省エネ対策の加速では、建築物のエネルギー消費性能を向上させて、省エネ化を促進することを目的とします。具体的には、建築物の断熱性能向上や設備機器の効率化などを通じて、エネルギー消費量の削減を目指します。

一方、木材利用の促進では、建築物分野での木材活用を拡大することを目的とします。

木材は、製造時のエネルギー消費量が他の建材と比較して圧倒的に少なく、さらに成長過程でCO2を吸収・固定化する性質を持っています。また、日本は森林率が約67%と世界有数の森林国であり、かつ建築物分野が木材需要の大きな割合を占めています。

そのため、国産材を活用することで森林の適切な管理と地域経済の活性化にもつながるのです。

建築物省エネ法では、大きな2つの目標をもとに、2050年のカーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)の目標達成に向けて、建築物分野における温室効果ガス排出量の大幅な削減を目指しています。

― 2025年4月から適合義務の範囲が大幅に拡大

― 2025年4月から適合義務の範囲が大幅に拡大

2025年4月の改正により、建築物省エネ法は建築物の省エネ性能に関してこれまでで最も影響の大きい変更が施行されました。

2025年3月末までは、大規模(2000㎡以上)・中規模(300㎡以上2000㎡未満)の非住宅建築物には適合義務、住宅には届出義務が適用されていました。また、小規模建築物(300㎡未満)については、非住宅・住宅ともに建築士による説明義務となっていました。

しかし、法改正後は、規模や用途を問わず、原則としてほぼすべての新築・増改築の建築物に省エネ基準への適合が義務付けられることになりました。
規模や用途別の省エネ基準への適合義務
適用範囲の拡大は、日本の建築物全体におけるエネルギー消費量の削減に大きく貢献することが期待されると同時に、申請プロセスにおける審査の厳格化を意味します。

建築主や設計事務所は、省エネ基準違反による罰則を避けるため、法改正の内容を正しく理解し、適切な対応を取ることが急務となっています。
建築物省エネ法に適合する
建築物の【計画から竣工まで】
建築物省エネ法に適合する建築物の【計画から竣工まで】
建築物省エネ法への適合は、単に設計段階で基準を満たすだけでは不十分です。

計画から竣工まで、各段階で適切な手続きを踏み、継続的な管理を行うことが求められます。特に2025年4月の法改正により適合義務が拡大された今、違反による罰則を避けるためにも、正しいプロセスを理解しておくことが重要です。

― 省エネ基準に適合した設計

― 省エネ基準に適合した設計

省エネ基準に適合する建築物を計画するには、プロジェクトの最も初期の段階から省エネ性能を考慮することが重要です。

建築物省エネ法では、住宅および非住宅建築物において、それぞれ以下の基準への適合が求められます。
省エネ基準適合の基本要件
省エネ基準適合の基本要件
上記の基準を満たさない建築物は建築することができないため、計画段階から正確な省エネ計算を行い、基準適合を確実にすることが必要です。

― 省エネ適判と建築確認申請

― 省エネ適判と建築確認申請

建築物に着工するには、建築主事又は指定確認検査機関から確認済証の交付を受けなければいけません。

確認済証の交付には、省エネ適判と建築確認申請の2つの異なる手続きが必要です。
確認済証の交付に必要な2つの手続き
省エネ適判では、所管行政庁又は登録省エネ判定機関が、省エネ計画を審査します。省エネ基準に適合していると判定されれば、省エネ適合判定通知書を交付します。

省エネ適合判定通知書は、建築確認申請に必要な書類の一つです。つまり、省エネ適判で適合判定を受けなければ、建築確認申請が完了せず、着工することができないのです。

このように、省エネ適判と建築確認申請は密接に連動しているため、両方の手続きを適切に進めることで、法的な要件を満たした建築が可能になります。

― 施工段階の省エネ基準遵守と工事監理

― 施工段階の省エネ基準遵守と工事監理

確認済証の交付後は、設計図面に基づいて工事を進めます。

施工段階では、工事監理者が設計図書に記載された断熱材の種類や厚さ、窓の仕様などが正しく施工されているかを確認・管理することが重要です。

施工中に省エネ計画の変更が生じた場合は、変更内容に応じて「計画変更」や「軽微な変更」の手続きが必要になります。

完了検査においては、建築主事等により省エネ計画どおりに工事が施工されていることの確認が行われるため、省エネ適判で承認された計画どおりに工事を進めることが原則となります。

変更申請は完了検査の前日までには済ませておく必要があるため、早期の対応が不可欠です。

― 完了検査における省エネ基準適合確認と検査済証取得

― 完了検査における省エネ基準適合確認と検査済証取得

工事が完了したら、建築物が設計図書どおりに施工されているかを確認するために、完了検査が行われます。完了検査は、工事完了届の提出から4日以内に申請し、建築確認申請を行った所管行政庁または指定確認検査機関の建築主事や確認検査員が現地で実施します。

完了検査では、建築基準法に加えて建築物省エネ法の省エネ基準適合も同時に確認されます。検査員は提出した省エネ計画書どおりに施工されているか、書類や目視等で厳格に確認します。

検査に合格すると検査済証が交付されますが、不適合の場合は是正後の再検査が必要となります。
建築物省エネ法違反で罰則を受ける4つの項目
建築物省エネ法違反で罰則を受ける4つの項目
建築物省エネ法に違反した場合、行政指導から罰則まで、段階的な処分が科されます。

法的トラブルを避けるためにも、どのような行為が罰則の対象となるのか、具体的な4つの違反項目とその内容を確認しておきましょう。

― 罰則が適用されるまでの流れ

― 罰則が適用されるまでの流れ

建築物省エネ法の罰則は、いきなり科せられるわけではありません。違反が発覚してから罰則が適用されるまでには、以下のステップを踏みます。
  1. 調査協力の要請と事実確認
    完了検査の結果や情報提供などから、違反の疑いが生じると、所管行政庁(都道府県知事や市区町村長など)は、建築主や設計者などに対して調査協力を要請し、事実確認を行います。
  2. 是正指示
    調査の結果、省エネ基準に適合していないと判断された場合、所管行政庁は建築主等に対し、期限を定めて適合させるための「指示」を行います。
  3. 是正命令
    指示に従わなかった場合や是正が不十分な場合、所管行政庁はより強制力のある「基準適合命令」を発動します。
  4. 命令違反による罰金
    所管行政庁からの基準適合命令に従わなかった場合、建築物省エネ法に規定された罰則が科されます。
このように、違反はすぐに罰則に直結するわけではなく「指示 → 命令 → 命令違反による罰則」という段階を踏むのが原則です。

― 項目①省エネ計画の虚偽申請

― 項目①省エネ計画の虚偽申請

省エネ適合性判定で提出する「省エネ計画」の内容を意図的に偽って申請した場合、罰則の対象となります。

虚偽申請は、基準を満たせない建物を無理に適合させるために行われることが多く、これは建築主や消費者を欺く行為です。省エネ計画の申請を怠ったり、虚偽の申請を行ったうえで工事に着手した場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
第七十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。 一 第十五条第一項、第二十三条第四項、第二十六条第四項若しくは第二十八条第四項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

― 項目②省エネ基準適合認定・表示制度(eマーク)の虚偽表示

― 項目②省エネ基準適合認定・表示制度(eマーク)の虚偽表示

「eマーク」とは、建築物省エネ法第36条に基づく「基準適合認定・表示制度」により、所管行政庁によって建築物がエネルギー消費性能基準に適合していると認定された証として表示できる認定マークです。

認定を受けると、建築物やその広告に「省エネ基準適合認定マーク(eマーク)」を表示することが許可されます。
省エネ基準適合認定マーク
認定を受けていない建築物にeマークを表示することは、消費者や取引相手に対して省エネ性能があるかのように誤認させる行為にあたります。

この行為は、景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)に該当する可能性があります。優良誤認表示とは、実際よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示を行うことを禁じる法律です。

認定を受けていない建築物にeマークを表示すると、景品表示法による『不当表示』に該当し、消費者庁または都道府県知事から表示の中止や事実公表を命じられます。

これに従わない場合、(個人で)2年以下の懲役または300万円以下の罰金(景品表示法第46条)、法人には3億円以下の罰金(景品表示法第49条)、さらに得た売上額の約3%が課徴金として課される可能性があります(景品表示法第8条)。

この課徴金は法人・個人を問わず適用され、規模が大きい場合は数千万円〜数億円に達する可能性もあります。

― 項目③完了検査に合格していない建築物の使用

― 項目③完了検査に合格していない建築物の使用

完了検査においては、当初の省エネ計画で示した性能と実際の建築物が同一であるかどうかが確認されます。

もし完成した建築物が省エネ計画における数値や仕様から少しでも変更があり、省エネ計画と実際の建築物に差異があると判断された場合、検査に合格できず、引き渡しも使用もできません。

その際、所管行政庁から「基準適合命令」が出されますが、それでも是正を行わなかった場合には、300万円以下の罰金が科される可能性があります。
第七十条 第十三条第一項の規定による命令に違反したときは、その違反行為をした者は、三百万円以下の罰金に処する。

― 項目④省エネ関連書類の紛失や破棄

― 項目④省エネ関連書類の紛失や破棄

建築主には、建築物の竣工後も、省エネ性能に関する書類を適切に保管する義務があります。書類を紛失したり、意図的に破棄したりした場合、建築物省エネ法第73条(帳簿未備付・保存義務違反等)に該当し、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
第七十三条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第四十七条第一項(第五十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して帳簿を備え付けず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
省エネ基準法の罰則に関してよくある質問
省エネ基準法の罰則に関してよくある質問
建築物省エネ法の改正により、適合義務の対象が拡大され、多くの建築主や設計事務所の方々が、罰則や責任の所在について疑問や不安を抱えています。

ここでは、そのような皆様から特に多く寄せられる質問にお答えします。行政処分が公表される可能性や、対象となる建築物の範囲、そして罰則の責任を負うのは誰なのかといった、重要なポイントを解説します。

― 罰則・行政処分の事実は公表されますか?

― 罰則・行政処分の事実は
公表されますか?

建築物省エネ法に基づく命令違反や罰則の適用を受けた場合、その事実が所管行政庁(国土交通大臣、都道府県や市町村)のウェブサイトや公告で公表されることがあります。

建築物省エネ基準を満たさない建築主や施工業者、販売事業者が勧告に従わなかった場合、以下のように法律で「その旨を公表することができる」と定められています。
第二十三条第二項 国土交通大臣は、前項の勧告を受けた特定一戸建て住宅建築主等がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
第二十六条第二項 国土交通大臣は、前項の勧告を受けた特定一戸建て住宅建設工事業者等がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
第二十八条第二項 国土交通大臣は、前項の勧告を受けた販売事業者等がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
罰金や行政処分の公表は、社会的な信用を失うことにつながり、ビジネスに大きな影響を与える可能性があるため、違反を犯さないよう十分な注意が必要です。

― 建築物省エネ法の対象外になる建築物はありますか?

― 建築物省エネ法の対象外になる
建築物はありますか?

2025年4月からの改正法により、原則としてすべての新築・増改築の建築物が省エネ基準適合義務の対象となりましたが、一部の建築物は対象外となります。

具体的には、床面積が10㎡以下の新築や増改築(ただし、詳細は所管行政庁によって異なる場合があります)や、居室を有しない又は高い開放性を有するため空調設備が必要のない建物(市場・野外ステージ)などが該当します。また、文化財保護法に基づき指定された建築物や、仮設建築物なども対象外になる場合もあります。

― 建築物省エネ法の罰則は誰が責任を負いますか?

― 建築物省エネ法の罰則は
誰が責任を負いますか?

建築物省エネ法の違反に対する責任は、違反の内容や立場によって異なります。
建築物省エネ法の違反に対する立場別の責任
違反に対して罰則が科される場合、最も重い責任を負うのは違反行為を直接行った者です。

そのため、関係者全員が省エネ基準の遵守について自身の役割と義務を正確に理解し、契約書や業務委託書に責任範囲を明記するなどの対策を講じることが大切です。
建築物省エネ法を遵守した建築設計は
上岡祐介建築設計事務所へ
建築物省エネ法を遵守した建築設計は上岡祐介建築設計事務所へ

2025年4月の法改正により、省エネ基準への適合義務が拡大し、違反による罰則リスクも高まりました。複雑な省エネ計算や各種申請など、法令遵守に必要な手続きの負担は大きくなっています。

上岡祐介建築設計事務所は、省エネ計算に特化したパートナーとして、法令遵守のための手続きをサポートします。設計者の意図を尊重しながら、必要な計算や資料作成を正確に行い、省エネ基準適合の実現を支援いたします。

省エネ計算から「省エネ適判」「BELS申請」まで、ワンストップで対応可能ですので、設計者の皆様は本来の業務に集中することが可能です。省エネ設計の負担を軽減したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

省エネ計算代行 スピーディーかつ高精度な省エネ計算で、
申請から完了検査までスムーズにサポート
日本全国対応
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