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ZEBの計算は何から始める?
設計初期の判断ポイントと注意点を整理

ZEBの計算は何から
始める?設計初期の
判断ポイントと
注意点を整理

コラム|ZEBの計算は何から始める?設計初期の判断ポイントと注意点を整理
コラム|ZEBの計算は何から始める?設計初期の判断ポイントと注意点を整理
国の脱炭素政策や2050年カーボンニュートラルの実現に向けた流れを背景に、ZEB(Net Zero Energy Building)への関心が高まっています。

公共建築物や民間のオフィスビル、ホテルなどを中心に、ZEBを前提とした計画が進められる場面も増えてきました。

一方、実務面で課題となっているのが、ZEBの実現に必要となる一次エネルギー消費量の計算です。ZEBは、非住宅建築物の年間一次エネルギー消費量を評価し、その収支を正味ゼロに近づけることを目指した建築物です。

BEIが基準値以内であれば適合となる省エネ基準に対し、ZEBではより厳しい一次エネルギー消費量の削減だけでなく、創エネルギーを含めた収支で評価されます。

評価の条件が増える分、計算も省エネ基準に比べて複雑になりがちです。

ZEBを前提とした設計を進めるうえで、判断を誤らないためにもZEBの計算の考え方や進め方を確認しておきましょう。
非住宅建築物のZEB設計で押さえる計算の基本
非住宅建築物のZEB設計で
押さえる計算の基本
非住宅建築物におけるZEBの評価は、建築基準法に基づく建築確認や、建築物省エネ法に基づく省エネ適合性判定(以下、省エネ適判)と密接に関係しています。

省エネ適判では、基準一次エネルギー消費量に対して設計一次エネルギー消費量がどの程度削減されているかを、BEI(Building Energy Index)によって判定します。

ZEBでは、この省エネ基準の評価を土台としながら、省エネ基準を上回る削減水準を求められます。さらに、創エネルギーを含めた一次エネルギー収支まで踏まえ、建築物のエネルギー性能を段階的に位置づけます。
ZEBの評価ポイントのイメージ
省エネ基準が建築物省エネ法に基づく法定基準であるのに対し、ZEBは環境省を中心に推進される評価制度であり、制度上の位置づけや所管は異なります。

ただし、評価の前提となる一次エネルギー消費量の計算手法自体は、省エネ基準とZEBで共通している部分が多くなります。

ZEBの設計では省エネ計算を「満たすかどうか」で終わらせるのではなく、削減水準をどこまで突き詰められるかが評価のポイントになります。

― 最初に目標区分を決め、逆算で設計条件を固める

― 最初に目標区分を決め、
  逆算で設計条件を固める

ZEBには『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedといった4つの区分があり、それぞれ一次エネルギー消費量削減率や創エネルギーの扱いが異なります。

非住宅建築物のZEB設計では、最初にZEBの目標区分を明確に定め、その達成条件から逆算して設計条件を固めることが重要です。

定義を整理しないまま設計を進めると、計算段階で目標未達が判明し、設計変更や再計算が発生しやすくなります。

目標区分が決まれば、BEIの目標値、一次エネルギー消費量の削減内訳、創エネルギーの要否を逆算し、外皮性能や設備性能の最低ラインを設定します。

例えばZEB Readyを目指す場合、創エネルギーは評価対象外となるため、外皮と設備のみでBEI0.5以下を達成する設計が前提となります。

このように、前提を設計初期に関係者間で共有しておくことで、計算と設計の方向性が一致し、差し戻しのない実務進行ができるのです。

1.「『ZEB』(ゼブ)」

1.「『ZEB』(ゼブ)」

『ZEB』は、基準一次エネルギー消費量を正味で100%以上削減する建築物です。4つの区分の中で最も省エネルギー性能が高い建築物として位置づけられています。
ZEBとは何かを説明した図
『ZEB』の実現には、以下2つの基準を満たす必要があります。

➀基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギーを除く)
➁基準一次エネルギー消費量から100%以上の削減(再生可能エネルギーを含む)

なお、『ZEB』は、一般に区分名としてZEBではなく『ZEB』と表記されます。

2.「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」

2.「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」

年間の一次エネルギー消費量を、省エネと創エネ併せて75%以上100%未満に削減した建物です。
Nearly ZEBを説明した図
Nearly ZEBの実現には、以下2つの基準を満たす必要があります。

➀基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギーを除く)
➁基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減(再生可能エネルギーを含む)

Nearlyは「ほとんど」という意味なので、ZEBに近い性能を持つ建築物という位置づけです。

『ZEB』の基準は満たさないですが、高いエネルギー効率と環境配慮を実現できる現実的な選択肢として注目されています。

3.「ZEB Ready(ゼブレディ)」

3.「ZEB Ready(ゼブレディ)」

再生可能エネルギー(創エネ)を除き、外皮性能の向上と高効率な設備導入のみで、一次エネルギー消費量を基準値から50%以上削減した建物です。
ZEB Readyを説明した図
ZEB Readyは、すでにある汎用的な技術を活用することで基準を達成できる可能性が高いため、他の区分と比較してより多くの建築物で実現しやすくなっています。

4.「ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)」

4.「ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)」

延床面積10,000㎡以上の大規模建築物を対象とした区分です。

創エネの採用の有無は問わず、建物用途別に定められた省エネ削減率(事務所などは40%以上、ホテルや病院などは30%以上など)を満たし、かつ未評価技術の導入など、さらなる省エネへの取り組みが求められます。
ZEB Orientedを説明した図

― ZEBは「外皮・設備・運用」のバランスで成立させる

― ZEBは「外皮・設備・運用」の
  バランスで成立させる

ZEBの設計は、高効率設備や太陽光発電といった個別要素だけで成立するものではなく、外皮・設備・運用条件を一体として成立させることが前提となります。

一次エネルギー消費量の評価は、これらを組み合わせた結果として算定されるため、どれか一つを強化すれば達成できるという考え方は成り立ちません。

設計初期から全体バランスを意識して計画することが、ZEB評価を安定して通すための基本となります。

特に注意すべきなのは、外皮・設備・運用のいずれかに依存した設計です。

例えば、外皮性能が不十分なまま設備性能だけでBEIを下げようとすると、設備仕様が過剰になり、コスト増や将来の更新リスクを抱えやすくなります。

逆に、外皮性能のみを極端に高めても、設備や運用条件が追いつかず、ZEB区分に求められる削減率に届かないケースもあります。

また、運用条件を過度に厳しく設定して削減率を稼ぐ方法は、評価上は成立しても、実運用との乖離が大きく、詳細な根拠の提示や再計算につながりやすい点に注意が必要です。

実務では、地域区分に応じた外皮性能の目安を設定した上で、標準的な高効率設備を組み合わせ、一次エネルギー消費量を早い段階で試算します。

その結果を踏まえ、不足分を外皮・設備・創エネのどこで補うのかを整理し、運用条件についても実態と乖離がないかを確認しなければいけません。

評価を通すことだけを目的にせず、バランスが取れた設計とすることが、差し戻しを防ぎ、実運用でも失敗しないZEB設計につながります。

― 設計初期から「根拠を残す」前提で進める

― 設計初期から「根拠を残す」
  前提で進める

ZEB評価や申請は、設計者が設定した前提を説明できることが前提となります。

以下の内容について、なぜその設定にしたのかが説明できない場合、数値が適正であっても再確認や修正を求められる可能性があります。
  • 用途区分
  • 運用条件
  • 設備仕様
  • 創エネルギー容量など
そのため、設計初期から外皮、設備、運用条件、創エネルギーについて、なぜその仕様や数値を採用したのかを資料として整理しておくことが重要になります。

あわせて、図面図書、仕様書、計算条件を一元的に管理し、設計変更が発生した場合は計算内容も更新し、差分を追える状態にしておきます。

最終的には、判断理由と裏付け資料をセットにした説明用資料としてまとめておくことが、スムーズな評価と申請につながります。
ZEBの実現に向けた省エネ計算の方法
ZEBの実現に向けた
省エネ計算の方法
ZEBの評価は、外皮性能・設備仕様・運用条件・エネルギーを総合した結果としてBEIで判定されます。

以下の流れを正しく理解しておくことで、設計と計算の不整合を防ぎやすくなります。
  1. 設計一次エネルギー消費量の算出
  2. 基準一次エネルギー消費量との比較によるBEIの算定
  3. 創エネを加味したZEB区分の判定
ここでは、非住宅建築物のZEB設計で実務上押さえるべき省エネ計算の基本的な進め方を整理します。

― 1.設計一次エネルギー消費量を算出

― 1.設計一次エネルギー
  消費量を算出

非住宅建築物の一次エネルギー消費量計算は、主に「空調・換気・照明・給湯・エレベーター」の5つの設備カテゴリーと、建物の「外皮性能(断熱・日射遮蔽)」によって構成されます。

まず土台となるのが外皮性能です。断熱性能は感覚的な良し悪しではなく、断熱材の熱伝導率と厚さによって定量的に評価されます。

断熱材の熱抵抗Rは以下の式で求められます。
【熱抵抗Rの計算式】
R(m²K/W)= 材料厚さ d(m) ÷ 熱伝導率 λ(W/mK)
この熱抵抗Rの単位はm²K/Wで、数値が大きいほど熱を通しにくく、断熱性能が高いことを意味します。

ZEBの設計では、この外皮性能を算出した上で、採用する高効率設備(空調や照明など)の性能値を専用のWEBプログラムに入力し、建物全体の設計一次エネルギー消費量を導き出します。

外皮性能は、WEBプログラムにおいて直接数値を入力する重要な項目であり、空調設備の負荷計算に直結します。断熱材のR値を根拠なく設定すると、建物全体の消費エネルギーが過大に算出され、目標とするZEB区分に届かなくなります。さらに、設備計算との整合性が取れずに後工程での再計算や修正が発生しやすくなります。

設計初期からR値の算定根拠を明確にし、外皮性能と設備計画を一体で検討することが、安定したZEBの設計につながります。

― 2.基準一次エネルギー消費量と比較してBEIを算出

― 2.基準一次エネルギー消費量と
  比較してBEIを算出

設計一次エネルギー消費量を算出したあとは、その数値が省エネ基準に対してどの水準にあるのかを確認します。そのために行うのが、基準一次エネルギー消費量との比較とBEIの算出です。

BEIは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除して求める指標で、建物の省エネ性能を客観的に評価するための基準となります。
BEIの計算式とその内訳
基準一次エネルギー消費量は用途区分や規模ごとにあらかじめ定められており、設計者が任意に調整することはできません。BEIは設計条件の妥当性を示す結果そのものと言えます。

BEIの値が小さいほど省エネ性能が高く、ZEB区分ごとに達成すべき目標水準が異なります。設計段階では、目標とするZEB区分に対して、現在の設計がどの位置にあるのかをBEIで把握し、不足している削減量を整理することが重要になります。

BEIは外皮、設備、運用条件を総合した結果であるため、特定の要素だけで調整しようとすると不自然な設計になりやすくなります。

特に運用条件を過度に厳しく設定してBEIを下げる方法は、実態との乖離が生じやすく、評価時に説明を求められる原因になります。

設計一次エネルギー消費量を算出したあとは、基準値と照合してBEIを確認し、設計全体として省エネ性能が妥当かどうかを判断します。この流れを意識することが、ZEB設計を安定して進めるための重要なポイントです。

― 3.創エネ(再生可能エネルギー)を考慮してZEB区分を判定

― 3.創エネ(再生可能エネルギー)
  を考慮してZEB区分を判定

設計一次エネルギー消費量とBEIを整理した上で、最終的にZEB区分の判定を行います。この段階で考慮されるのが、太陽光発電などの創エネによる一次エネルギー削減効果です。

創エネは、建物で消費される一次エネルギーに対してどれだけ相殺できるかという視点で評価されます。

『ZEB』では、省エネのみで一定割合以上の削減を達成した上で、創エネを加えることで一次エネルギー消費量をゼロ以下にすることが求められます。

一方、Nearly ZEBやZEB Readyでは、創エネの扱いや必要性が異なるため、目標区分に応じた考え方が必要です。

創エネ容量は、屋根面積や周辺環境、用途制約によって左右されます。そのため、無理な前提設定は避けるべきです。

実現可能な創エネ量を前提に、省エネ側でどこまで削減すべきかを整理することが、現実的なZEB設計につながります。

創エネは補完要素であり、省エネ設計とのバランスを踏まえて区分判定を行うことが重要になります。
ZEBの計算で起こりがちな5つの注意点
ZEBの計算で起こりがちな
5つの注意点
ZEB設計では、一次エネルギー消費量の計算手順を理解していても、前提条件の整理不足や設計との不整合によって手戻りが発生するケースが多く見られます。

数値上は成立していても、用途区分や運用条件、設備仕様の設定理由が説明できない場合、評価や申請の段階で差し戻しにつながりやすくなります。

ここでは、非住宅建築物のZEB計算において実務で起こりがちな注意点を解説します。

― 用途区分や運用条件の設定が実態とずれている

― 用途区分や運用条件の
  設定が実態とずれている

ZEB計算で最も多いミスの一つが、用途区分や運用条件が実態と合っていないまま設定されているケースです。

用途区分は基準一次エネルギー消費量の前提となるため、誤った区分を選ぶとBEIの評価自体が成立しません。また、運用時間や稼働率を過度に低く設定すると、計算上は省エネでも実態と乖離した数値になります。

評価時にはなぜその運用条件としたのかを説明できることが求められるため、実際の使われ方を想定した現実的な設定が不可欠です。

― 図面の内容と計算条件が一致していない

― 図面の内容と計算条件が
  一致していない

図面と一次エネルギー消費量計算の条件が一致していないことも、差し戻しの大きな原因です。

例えば、図面では断熱材の厚さや設備能力が変更されているにもかかわらず、計算条件が初期案のままになっているケースがよく見られます。

審査では図面、仕様書、計算結果の整合性がないと、再確認を求められやすくなります。

設計変更が発生した場合は、必ず計算条件も更新し、差分を管理する体制が必要です。

― 設備仕様の根拠が不十分なまま計算している

― 設備仕様の根拠が
  不十分なまま計算している

高効率設備を採用しているにもかかわらず、その仕様根拠が整理されていないまま計算を進めてしまうことも注意点です。

カタログ値や想定効率をそのまま入力しているだけでは、評価時に妥当性を説明できません。どうしてその機器を選定したのか、能力や効率が設計条件に合っているのかといった判断理由が求められるためです。

メーカー資料や選定表などを根拠として残しておくことで、計算結果に対する説明力が高まり、差し戻しを防ぐことにつながります。

― 創エネの前提条件を整理せずに計算へ反映している

― 創エネの前提条件を整理
  せずに計算へ反映している

創エネルギーをZEB計算に反映する際、設置容量や自家消費、売電の扱いを整理しないまま数値だけを入力してしまうケースがあります。

創エネは敷地内設置が前提であり、評価対象となる条件も明確に定められています。その前提を理解せずに計算すると、後から条件不適合が判明し、再計算が必要になる場合があります。

創エネは省エネを補完する要素です。そのため外皮や設備との役割分担を整理した上で計画することが重要です。

― ZEBの計算を設計確定後に後追いで行っている

― ZEBの計算を設計確定後に
  後追いで行っている

設計がほぼ確定した段階で初めてZEB計算を行うと、目標区分に届かないことが判明した場合の修正余地が小さくなります。

その結果、無理な設備追加や運用条件の調整で対応せざるを得ず、計算の説得力が下がります。

ZEB計算は確認作業ではなく、設計を導くための検討ツールとして初期から行うべきものです。早い段階で試算を行い、設計と計算を並行して進めることが、安定したZEB設計につながります。
ZEBに必要な省エネ計算と申請対応を
当社が一括サポート
ZEBに必要な省エネ
計算と申請対応を
当社が一括サポート
ZEBの計算は、数値を入力する作業から始めるものではなく、設計初期にどの前提をどう判断するかから始まります。

目標とするZEB区分の設定、外皮・設備・運用の考え方、そして一次エネルギー消費量計算に用いる条件整理が曖昧なまま進めると、後工程で差し戻しや再計算が発生しやすくなります。

上岡祐介建築設計事務所では、非住宅建築物のZEBにおいて、設計初期の判断整理から省エネ計算、評価・申請対応までを一括でサポートしています。

物件の用途や構造を問わず幅広い案件に対応しております。
ZEBの実績(一部)
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