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断熱範囲図の書き方でもう迷わない!
申請を確実に通す正しい作成手順

断熱範囲図の書き方で
もう迷わない!
申請を確実に通す
正しい作成手順

コラム|断熱範囲図の書き方でもう迷わない!申請を確実に通す正しい作成手順
コラム|断熱範囲図の書き方でもう迷わない!申請を確実に通す正しい作成手順
断熱範囲図は、建築物における断熱材の種類・厚さ・施工部位を把握するための設計図書です。平面図・断面図で作成され、壁、天井、床、屋根などの各部位における断熱材の施工範囲と仕様を明示します。

日本では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、建築物の省エネ性能への要求が一段と高まっています。建築物の省エネ性能を評価する指標の一つが断熱性能となっているため、省エネ関連の評価や認証において、断熱範囲図を明示する設計図書が重視されています。

しかし、断熱範囲図の作成に自信がない、または作成したことがないという設計事務所がいるのも事実です。また、経験者でも「計算書との不整合」で「再提出」が頻発している現状があります。

そこで今回は、断熱範囲図の役割と正しい作成手順、そして申請時のよくあるミスと対策を解説します。
断熱範囲図

断熱範囲図の役割は、断熱仕様の見落としや解釈の違いを防ぎ、設計通りの断熱性能を確保することです。

省エネ計算と断熱仕様の整合性を客観的に示せるため、以下の省エネ関連の審査・届出で提出が求められます。

  • 省エネ適合性判定(省エネ適判)
  • 長期優良住宅(認定)
  • 低炭素建築物(認定)
  • BELS(表示制度)
  • 東京ゼロエミ住宅(認証)
  • 住宅性能表示制度
  • ZEH(補助金等)
特に省エネ適判では、2025年4月施行の建築物省エネ法改正により、断熱範囲図の提出が原則必須となりました。未提出や記載の不備がある場合、外皮仕様の整合が確認できず、不適合と判断される可能性があります。

確認済証の交付を受けるには、まず省エネ適合性判定の審査を終え、適合となったことを示す「省エネ適合判定通知書」を取得している必要があります。

「省エネ適合判定通知書」がなければ、確認済証の交付を受けられず、結果として着工できません。

そのため、正確な断熱範囲図を作成することが不可欠です。

― 断熱範囲図に記載する要素

― 断熱範囲図に記載する要素

断熱範囲図には、以下の情報を網羅的に記載する必要があります。
断熱範囲図に必要な要素
断熱材の仕様記載については、記載する情報が断熱材ごとに異なります。
断熱材の使用記載
壁、天井、床、屋根など各部位に使用する断熱材の材種と厚さは、ミリメートル単位で詳細に明記しなければなりません。また、日射熱取得率の計算に必要な方位(真北)、外気と接する建物の表面積を正確に計算した外皮面積を記載することで、建物の総体的な断熱性能を評価できます。

窓やドアなどの開口部の仕様については、サッシの種類やガラスの構成(ペアガラス、トリプルガラスなど)、U値(熱貫流率)などを詳細に記載することで、開口部からの熱の出入りを正確に評価できます。

― 作成・提出時の基本ルール

― 作成・提出時の基本ルール

断熱範囲図は、以下の基本ルールに従って作成することが重要です。
断熱範囲図の基本ルール
断熱範囲図に必要な情報が明記されていない、あるいは省エネ計算書と数値が不整合だと、審査機関は根拠確認ができず差し戻し・再提出となる場合があります。

基本ルールに沿った方法は、手間がかかるかもしれません。しかし、差し戻し・再提出となると追加の作業負担が発生するため、最初から丁寧に進めておく方が、トータルの工数は小さくなる場合があります。

なお、提出体裁(紙/電子)や書式の細部は、審査機関・自治体ごとに要領が異なるため、各機関の提出要領を必ず確認してください。
断熱範囲図の作成前に必要な準備
断熱範囲図の作成前に
必要な準備
断熱範囲図は、事前に必要なデータを整理しておくと作成のスピードが上がるだけでなく、表記ゆれや数値の食い違いが起きにくくなります。

また、省エネ関連の申請・審査での差し戻し・再提出のリスクを抑えられるため、スケジュールの遅延を防げます。

― 図面と資料の用意

― 図面と資料の用意

断熱範囲図の作成では、着手する前に建築物の全体像を把握できる図面・資料を準備します。

建築物の形状・方位・寸法・納まりを統一したうえで部位別の断熱仕様を図面化し、数値を完全に一致させる必要があるためです。

以下は、断熱範囲図の作成に必要な図面・資料です。
断熱範囲図の作成に必要な図面・資料
上記の図面・資料は、断熱材がどこまで施工されるかを、正確に判断するための基礎資料となり、作成前に揃えていれば、作図→照合→提出まで一気に進められます。

― 断熱材の仕様と性能値のまとめ

― 断熱材の仕様と性能値のまとめ

断熱範囲図では、断熱材ごとに以下の仕様の記載が必要です。
  • 材料の種類(例:グラスウール、フェノールフォーム など)
  • JISの区分(例:JISの規格名や種別)
  • λ[W/(m・K)]
  • t[mm]:厚さ
  • R[m²・K/W]
非住宅建築物の省エネ計算で必要になる図面・書類2
断熱材の種類や厚さが図面上で明記されていない場合や、省エネ計算で使用した数値と図面記載の数値が異なる場合、審査機関は根拠確認ができず不適合と判断します。

しかし、断熱材の仕様を一覧にしてまとめておけば、図面と計算の数字をすぐに照らし合わせられるので、間違いが見つけやすく、やり直しも少なくなります。
断熱範囲図を正しく書くための3つのステップ
断熱範囲図を正しく書く
ための3つのステップ
断熱範囲図の作成では、以下のようなミスが起きる場合があります。
  • 玄関土間や車庫の熱的境界の判断ミス
  • 壁と基礎の取り合い部での断熱材欠損の見落とし
  • 図面と省エネ計算書の断熱材の種類と厚さの不整合
不具合がある状態で審査に提出すると、審査機関から「外皮仕様の根拠が不明」「計算書と図面の整合性不備」として差し戻しを受けることになります。

差し戻しリスクを回避し、一発で審査を通すためにも、断熱範囲図の正しい作成手順を確認していきましょう。

― 熱的境界の確定

― 熱的境界の確定

断熱範囲図を作成する最初のステップは「熱的境界」を正確に確定することです。

熱的境界とは、温度的にみて外気と室内を区分する境界面のことで、この線上に断熱材を配置する必要があります。
熱的境界の一例
例えば、2階建て住宅で1階にリビング・キッチン・浴室、2階に寝室がある場合、1階と2階のすべての部屋を暖かくしたいなら、外壁・屋根・1階床・窓やドアが熱的境界となります。一方、1階に車庫が組み込まれている場合、車庫は暖房する必要がないため、車庫と室内を仕切る壁が熱的境界となり、車庫の外壁は断熱の対象外となります。

熱的境界を確定するには、まず住宅の断熱方法がわかる図面(平面図・立面図・矩計図)をもとに、断熱する空間と断熱しない空間を明確に区分します。重要なのは、この境界線が途切れないよう連続してつながっていることで、隙間があると外の冷気が入り込んでしまいます。

特に注意が必要なのは、例外的な取り扱いです。玄関土間については、省エネ基準では「断熱構造としなくてもよい」とされ、平成21年からは面積制限も撤廃されています。

また、ユニットバス下部については、浴室に断熱措置(ユニットバス本体の断熱構造)があれば、土間床の断熱は省略可能とされています。ただし、作業土間のように玄関以外の土間床で外気や他室の床下に面する場合は断熱構造が必要です。

熱的境界の区分を正しく理解し、図面上で明確に確定することが、すべての作業の出発点となります。

― 断熱ラインの計画

― 断熱ラインの計画

熱的境界が確定したら、その境界線に沿って断熱ラインを計画します。

この段階では、建築物の特性に合わせて最適な断熱工法(屋根断熱・天井断熱・床断熱・基礎断熱など)を選び、その工法が図面上でどう表現されるかを計画します。

例えば、屋根や天井の断熱では、天井断熱と屋根断熱の2つの方法があります。天井断熱は天井の上に断熱材を敷く工法で、施工が簡単で費用を抑えられるメリットがあります。一方、屋根断熱は屋根の勾配に沿って断熱材を施工する方法で、小屋裏空間を活用できるため、ロフトや勾配天井を計画する場合に適しています。

また、床下の断熱では、床断熱と基礎断熱から選択します。

床断熱は床の下に断熱材を施工する工法で、施工が比較的簡単でシロアリの被害を発見しやすいメリットがあります。基礎断熱は基礎の立ち上がり部分に断熱材を施工する方法で、高い断熱性と気密性が得られ、床下エアコンや全館空調を導入する場合に適しています。

ただし、シロアリ対策や湿気管理に注意が必要です。

断熱ラインは途切れることなく連続させることが重要で、特に天井と屋根の取り合い部、屋根の軒先などは断熱材の隙間ができやすく、断熱欠損が生じやすいため注意が必要です。

断熱欠損は結露やカビの原因となるだけでなく、建物の耐久性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

コンセントやスイッチ類の位置、壁と床・天井の取り合い部分など、断熱性能を損なう可能性のある箇所を考慮して、最適な納まりを計画することが求められます。

特に木造軸組構法では、壁と床、壁と天井の取り合い部分に隙間が生じやすいため、断熱材の連続性を確保するための気流止めの施工を明記するなど、細部にわたる配慮が必要です。

― 図面化と整合チェック

― 図面化と整合チェック

断熱範囲図
断熱ラインの計画が固まったら、図面化の作業に入ります。平面図、断面図、矩計図、伏図に、決定した断熱ラインと仕様を正確に反映させていきます。

この際、複数の図面間で情報に矛盾がないかを確認することが重要です。

例えば、平面図で描かれた断熱ラインが断面図と一致しているか、屋根伏図のヒートブリッジの部分(設備基礎等)が最上階の見上げ図の断熱範囲と合っているかなど、相互に照らし合わせる作業を行います。

また、作成した断熱範囲図は、省エネ計算で使用する断熱材と一致しているかを確認します。図面上で示された断熱範囲や断熱材の厚さが、計算書に記載された数値と異なっていると、審査で差し戻しを受ける原因となります。
審査時の指摘を避ける断熱範囲図のチェック項目
審査時の指摘を避ける
断熱範囲図のチェック項目
断熱範囲図は、作成後にチェックが非常に重要です。この最終確認を丁寧に行うことで、審査機関からの指摘や差し戻しを未然に防ぎ、スムーズな申請手続きに繋がります。ここでは、特に注意すべき3つのチェック項目について解説します。

― 断熱ラインの連続性・断熱欠損・無断熱の明示

― 断熱ラインの連続性・断熱欠損
  ・無断熱の明示

断熱ラインの一例
最も重要なのは、断熱ラインに抜けがないか、連続性が保たれているかの確認です。断熱ラインは、熱的境界を途切れることなく囲むように描かれていなければなりません。

例えば、壁と天井の取り合い部分、窓やドアの開口部周り、基礎と土台の接合部などは、断熱材に隙間ができやすい、いわゆる「断熱欠損」が生じやすい箇所です。

図面上でこれらの部分を細かくチェックし、断熱材が途切れていないかを確認します。

また、無断熱の部位についても明確に記載することが大切です。断熱を施さない部分を、他の断熱部位と区別して表現することで、審査側が意図を正確に把握でき、不必要な指摘を避けることができます。

― 図面の基本体裁をそろえる

― 図面の基本体裁をそろえる

図面の内容が正確であることはもちろんですが、基本体裁が整っているかどうかも重要なチェックポイントです。見やすく、分かりやすい図面は、審査担当者の負担を軽減し、円滑な審査に貢献します。

具体的には、以下の項目を統一し、適切に記載しましょう。
  • 北表示:正確な真北を記載し、建物の向きを明確にする
  • 縮尺:全ての図面で統一された縮尺(例:1/100)を使用し、図面の整合性を保つ
  • 図面番号・図面名:図面ごとに適切な番号と名称を付与し、管理しやすくする
  • 改訂履歴・版管理:変更があった場合は、いつ、どのような変更があったかを履歴として残す
これらの体裁を整えることは、将来的な建物の維持管理やリフォームの際にも役立ちます。

― 提出先の確認項目に合わせて記載

― 提出先の確認項目に合わせて
  記載

断熱範囲図の提出先は、省エネ適合性判定機関や住宅性能評価機関など多岐にわたりますが、それぞれの機関が独自の確認項目や様式を設けていることがあります。

申請先のウェブサイトや手引きを事前に確認し、求められる記載事項や表現方法に合わせて図面を調整することが、差し戻しを防ぐ上で重要になります。

例えば、特定の断熱材や部位を示すためのハッチングや記号が指定されている場合がありますし、外皮面積の算出方法に特定のルールがあるケースもあります。

また、表の形式や、図面に含めるべき凡例の項目などが細かく指定されていることもあります。事前に提出先の要件を確認しておくことで、単純な形式不備による無用な指摘を未然に防ぎ、スムーズな申請手続きを実現できます。
断熱範囲図作成のミスを減らし

生産性を高める3つの方法
断熱範囲図作成のミスを
減らし生産性を高める
3つの方法
断熱範囲図は、省エネ性能の証明に欠かせない重要な図面です。

しかし、複雑な作成プロセスは、多くのミスを引き起こし、作業効率を低下させる原因となります。ここでは、そうした問題を解決し、生産性を高めるための3つの方法を解説します。

― ファイル命名規則と出力設定の統一で作業効率を向上

― ファイル命名規則と出力設定の
  統一で作業効率を向上

複数の担当者が関わるプロジェクトでは、ファイルの管理が煩雑になりがちです。適切に管理するには、ファイル命名規則と出力設定を統一することが効果的です。

国土交通省の「営繕工事電子納品要領」にあるように、ファイル名の文字数や使用文字、拡張子のルールをあらかじめ決めておくことで、ファイルの検索や管理が格段にスムーズになります。また、PDF化などの出力設定も統一しておけば、提出時の不備による差し戻しリスクを減らせます。

― 矩計図の断熱詳細を断熱範囲図に転用

― 矩計図の断熱詳細を断熱範囲図
  に転用

断熱範囲図を一から作成するのは大きな負担です。そこで、すでに作成されている矩計図の情報を有効活用することをおすすめします。

矩計図は、建物の壁や床、屋根などの詳細な納まりが描かれており、断熱材の種類や厚さ、施工方法といった情報が明記されています。これらの情報を断熱範囲図に転用することで、作業時間を大幅に短縮することができます。

また、矩計図と断熱範囲図の整合性を保つことで、図面間の矛盾を防ぎ、審査の指摘を受けるリスクを減らすことができます。転用は、手間を省くだけでなく、図面の品質向上にも繋がる実用的な方法です。

― 外注と連携して品質の高い断熱範囲図を作成

― 外注と連携して品質の高い断熱
  範囲図を作成

断熱範囲図の作成について、社内のリソースが限られている場合や、知見が不足している場合は、省エネ計算や図面作成の外注も検討しましょう。

断熱範囲図を外注すれば、依頼先が最新の基準や申請先の要件を熟知しているため、ミスが少なく、精度の高い断熱範囲図を短期間で作成してもらうことができます。

また、複雑な省エネ計算と図面作成を同時に依頼することで、両者の整合性を保つことが容易になります。

これにより、設計士は本来のクリエイティブな業務に集中でき、プロジェクト全体の生産性を高めることができます。
書き方が複雑な断熱範囲図は
当社にお任せください
書き方が複雑な
断熱範囲図は
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2025年4月の法改正により、建築物省エネ法の適合義務の拡大は、建築主、そして設計事務所や工務店の皆様にとって新たな課題となっています。

中でも、高度な専門性が求められる断熱範囲図の作成は、設計業務に大きな負担をかけるだけでなく、「図面の修正に時間がかかる」「他の計算会社に依頼しても、設計図書を読み解いてくれない」といった様々な悩みにつながっています。

上岡祐介建築設計事務所は、単なる計算代行業者ではなく、皆様と同じ意匠設計事務所として、現場の苦労や設計者の意図を深く汲み取ることを大切にしています。

豊富な実績(2,573棟以上)に裏打ちされた知見で、お客様のプロジェクトを力強くサポートします。

省エネ計算から断熱範囲図の作成までをワンストップで対応することで、設計者様は本来の創造的な業務に集中していただけます。

コストと性能を両立させる提案力、そして迅速で丁寧な対応で、皆様の課題解決をお手伝いします。断熱範囲図の作成や省エネ設計に関するお困りごとがございましたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
断熱範囲図作成 省エネ適判に断熱範囲図は必須!
日本全国対応
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