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建築設計の業務委託で依頼できる範囲は?
外注との違いと実務での注意点

建築設計の業務委託で
依頼できる範囲は?
外注との違いと
実務での注意点

コラム|建築設計の業務委託で依頼できる範囲は?外注との違いと実務での注意点
コラム|建築設計の業務委託で依頼できる範囲は?外注との違いと実務での注意点

設計事務所では、案件の受注状況が時期や経済状況によって変動するため、人件費をどこまで増やすべきか、判断が難しいという課題があります。

正社員を増やせば、建築設計業務の内製化により安定した体制をつくれますが、案件が減少した際の経営リスクも高まります。一方で、人員が少ないと、繁忙期や大型案件の受注時に対応しきれず、受注機会を逃すリスクがあります。

また、建築業界では深刻な人材不足が続いており、建築設計のスキルを持った人材の採用が難しい状況です。人材育成にも時間とコストがかかるため、必要な時にすぐ体制を整えることができません。

固定費と変動費のバランスを取りながら柔軟な経営体制を構築する方法として、多くの設計事務所が業務委託を活用しています。

ここでは、建築設計における業務委託の基礎知識から、実務での具体的な活用場面、トラブルを防ぐための契約時の注意点を解説します。

建築設計における業務委託の定義
建築設計における
業務委託の定義
業務委託とは、本来自社で行う業務の一部または全部を、外部の企業や個人に委託する契約形態です。

業務を依頼する側が「委託者」、業務を受ける側が「受託者」となり、双方の間に雇用関係は発生しません。雇用関係であれば、出社時間や休憩時間の指定、残業や休日出勤の指示といった業務遂行のために必要な事項についての指示ができます。

一方、業務委託では、「確認申請に必要な図面を○月○日までに提出してください」という形での依頼になります。作業場所や時間、業務の進め方については、基本的に受託者自身で決めることができます。

また、社会保険料の負担や福利厚生の提供義務がなく、労働基準法などの労働関連法令も原則として適用されません。そのため、委託者は必要な業務に対する報酬だけを支払えばよく、コストを業務単位で柔軟に調整できます。

なお、契約上は業務委託となっていても、実際には従業員と同じように細かく指示を出して働かせている場合は雇用契約とみなされ、労働法が適用される可能性があります。

― 契約形態の種類と責任範囲の違い

― 契約形態の種類と
  責任範囲の違い

建築設計の業務委託では、契約形態が請負契約、委任契約・準委任契約の3種類に分類され、それぞれ報酬の発生条件や責任範囲が異なります。
契約形態の種類と責任範囲の違い
請負契約は、成果物に対して報酬が支払われる契約です。

実施設計図面や確認申請図書の作成など、明確な成果物がある業務に適しています。成果物に不備があれば、受託者は修正や損害賠償の責任を負います。

また、委任契約は、契約の締結や登記手続きなど、法律的な効果が発生する行為を代理で行う契約です。建築設計の分野では、法律行為を伴う業務は少ないため、ほとんど使われません。

準委任契約は、委任契約と異なり、法律行為以外の専門的な業務を委託する契約です。業務を誠実に遂行すること自体に対して報酬が支払われます。

例えば、設計監理業務の補助や工事監理の支援業務では、「設計図書の照合」「施工状況の確認」といった継続的な業務が該当します。

― 責任の所在が外注や下請けと異なる

― 責任の所在が
  外注や下請けと異なる

外注とは、業務を社外の企業や個人に依頼する行為全体を表す広義の言葉です。

ただし、「外注」という用語には法的な定義がなく、実務上は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」といった法的に定義された契約形態を使用することが推奨されています。

契約書のタイトルや本文で「外注契約」という表現を使うと、契約の性質が不明確になるリスクがあるため、避けるべきとされています。

また、下請けとの違いは、元請けからの直接的な指揮監督の有無にあります。

下請けでは元請けの指示に従って業務を進めますが、業務委託では受託者が独立した立場で業務を遂行し、作業の進め方も自分で判断できます。

そのため、受託側は、単に指示された作業をこなすだけでなく、専門家として自ら判断し、より良い方法を提案することも期待されます。
建築設計で業務委託が選ばれる場面
建築設計で
業務委託が選ばれる場面
建築設計は、全てを内製化できればノウハウが社内に蓄積され、設計品質も安定するため理想的な状態と言えます。

しかし現実には、正社員を増やせば毎月の固定費が増加し、繁忙期が過ぎた後の業務量を確保できなければ経営を圧迫します。

特に建築設計業界では、年度末や大型プロジェクトの集中時期に人手が足りず、逆に閑散期には人件費負担だけが重くのしかかるという状況に陥りがちです。業務委託を活用すれば、従業員は固定費として確保しつつ、業務量の変動に応じて外部の専門家に依頼する体制が整います。

以下では、多くの設計事務所が実際に業務委託を活用している3つの具体的な場面を紹介します。

― 繁忙期の人員不足で設計業務が追いつかない

― 繁忙期の人員不足で
  設計業務が追いつかない

日経クロステックによれば、2022年度時点で設計事務所の91%が人材不足を感じており、そのうち83%以上が受注機会の逸失を、66%が残業時間の増大を懸念しています。

人材不足が深刻化すると、受注できる案件があっても対応できる人員がおらず、断念せざるを得ないという状況が生じます。また、限られた人員で案件をこなそうとすれば、残業時間の増加により、スタッフの健康問題や離職率の上昇を招くリスクもあります。

こうした状況を打開する策として有効な方法が業務委託の活用です。

例えば、実施設計で生じる膨大な図面の作図作業は、図面の書式・寸法・記号・レイヤー構成などが一定のルールに基づいて作成されるため、標準化しやすく、外部でも再現性を確保しやすい工程です。
業務委託に適した実施設計図面
定型業務を外部に委託することで、社内の設計士は専門性と判断力が求められる業務に時間を割けるようになります。
設計士が注力すべき業務
  • 設計コンセプトの立案と施主への提案
  • 法規制への適合性判断と行政協議
  • 構造・設備との整合性確認
  • クライアントとの打ち合わせと要望調整
  • 設計監理業務と品質管理
  • 若手スタッフへの技術指導
結果として、設計品質を落とすことなく対応可能案件数を増やせるため、売上向上と人材の働き方改善を同時に実現できる可能性が高くなります。

― 専門領域の業務が社内で対応できない

― 専門領域の業務が
  社内で対応できない

2025年4月に施行された建築物省エネ法の改正により、小規模建築物にも省エネ基準の適合が義務化されるなど、建築設計に求められる専門性は年々高まっています。

しかし、特定の分野で深い知識とスキルを持つ人材を社内で採用・育成するには、教育コストや人件費の負担が大きくなります。

近年、省エネ計算や天空図、断熱範囲図の作成といった専門性の高い業務を請け負う事業者が増え、建築業務における業務委託の選択肢は大きく広がっています。

さらに、委託先によっては、審査機関への申請手続きや指摘事項への対応まで一括して請け負うところもあり、最新の法規制にも精通しているため対応もスムーズです。

このような、専門性の高い委託先を活用することで、社内では意匠設計やクライアント対応といった設計の本質的な業務に集中できる体制が構築できます。

― 大型案件の対応に限った期間限定での人員確保

― 大型案件の対応に限った
  期間限定での人員確保

延床面積数千平米を超える共同住宅、商業施設、オフィスビルなどの大型案件では、実施設計段階で数百枚に及ぶ図面作成が必要になる場合があります。

しかし、大型案件のために正社員を増員しても、プロジェクト終了後に同規模の案件を継続的に受注できる保証はなく、閑散期には固定費として重い負担になります。

業務委託であれば、案件の規模と期間に応じて必要な人員を確保し、案件の完了後は契約を終了できるため、人件費の変動費化が実現できます。

特に大型案件では、意匠図・構造図・設備図を同時並行で作成する必要があるため、各専門分野の協力事務所と業務委託契約を結び、分業体制を構築することが効率的です。
建築設計で業務委託を活用する際の注意点
建築設計で業務委託を
活用する際の注意点
業務委託は人員不足の解決や専門性の確保に有効ですが、適切な管理を怠ると以下のようなトラブルに発展する可能性があります。
  • 成果物の品質が低い
  • 納期が守られない
  • 想定を超える追加費用の請求
  • 図面の整合性が取れない
  • 機密情報の漏えい
建築設計のトラブルは、確認申請のやり直しや施工の中断、クライアントからの信頼喪失につながるおそれがあります。

業務委託を安全かつ効果的に活用するためにも、実務で押さえておくべき4つの注意点を確認しておきましょう。

― 守秘義務とデータ管理の徹底

― 守秘義務とデータ管理の徹底

建築設計の業務委託では、施主情報、設計図面、見積書、技術的な検討資料など、機密性の高い情報を委託先と共有することになります。

万が一、情報が外部に漏えいすると、施主との信頼関係を損なうだけでなく、競合他社に技術情報が渡るリスクもあります。

しかし、秘密保持は、法律上の一般原則だけだと争点化しやすいため、NDA(秘密保持条項)として秘密情報の範囲・例外・期間・返却/廃棄・損害賠償を契約で明確化することが重要です。
契約書に明記すべき項目
  • 秘密情報の定義(設計図面、施主情報、見積書、検討資料など)
  • 使用目的の制限(本業務以外での使用禁止)
  • 第三者への開示禁止
  • 契約終了後の情報返却・廃棄義務
  • 再委託時の守秘義務の継承
  • 違反時の損害賠償責任
また、契約書だけでなく、実務レベルでのセキュリティ対策も重要です。

クラウドストレージやメールでのデータ送受信では、パスワード保護や暗号化を徹底し、委託先のセキュリティ管理体制についても事前に確認しておくべきです。

委託先が再委託を行う場合は、再委託先にも同等の守秘義務を課す条項を契約に盛り込みましょう。

― 契約期間と更新条件の明確化

― 契約期間と更新条件の明確化

業務委託の契約では、業務の開始日と完了日を明確に定めることが基本です。

図面制作の業務委託で納期を曖昧にしたまま契約すると、遅れが発生した際に認識のズレが生じ、委託者は「当然この日までに完成すると思っていた」と主張し、受託者は「そんな期限は聞いていない」と反論する事態になりかねません。

民法上、債務不履行による損害賠償を請求するには「期限までに履行されなかった」という事実が必要です。しかし、そもそも期限が明確でなければ、遅延の事実を立証することも難しくなります。

そのため、業務委託の契約時には納期について以下のような条件を記載することが重要になります。
契約期間について明記すべき項目
また、契約期間内に業務が完了しなかった場合の対応も、あらかじめ契約書で決めておきましょう。
 受託者のミスやスケジュール管理不足による遅延の場合
  • 遅延が発生した日数に応じて遅延損害金を支払う
  • 必要に応じて委託者が契約を解除できることを明記する
  • 追加費用は発生しないことを確認しておく
 災害・委託者側の事情など、受託者に責任がない遅延の場合
  • 契約期間を延長できることを定めておく
  • 延長時のスケジュール変更や追加費⽤の扱いも記載しておく
条件を明確にしておくことで、納期遅延時の責任区分や対応方針を判断しやすくなり、実務上の対応も円滑になります。

― 指示系統と連絡経路の統一

― 指示系統と連絡経路の統一

業務委託では、委託者側の「窓口担当者」を明確に定め、指示・確認・承認は必ずその担当者経由で行うようにします。

複数の担当者から異なる指示が出ると、受託者側で判断が分かれ、手戻り・スケジュール遅延・品質低下の原因になるためです。

また、委託者が受託者に仕様変更や修正依頼などの指示をする際は、口頭やチャットのみで済ませず、メールや議事録など記録が残る形式で通知します。

記録を残すことで、指示内容の行き違いを防ぐことができ、後日の確認や責任範囲の判断もしやすくなります。

― 納期・修正対応のルールを事前に設定

― 納期・修正対応のルールを
  事前に設定

実施設計図面の業務委託では、初回提出後に複数回の修正が発生することが一般的です。

修正対応の範囲や判断基準が曖昧なまま業務を進めると、結果的に想定外の追加費用やスケジュール遅延につながることがあります。そのため、契約時に以下の点を明確にしておくことが重要です。
株式会社上岡祐介建築設計事務所 » 建築設計の業務委託で依頼できる範囲は?外注との違いと実務での注意点
契約時に取り決めをしておくことで、修正対応の線引きや費用負担に関するトラブルを防ぎ、納品スケジュールと成果物の安定的な確保につながります。
建築設計の業務委託に関するよくある質問
建築設計の業務委託に
関するよくある質問
建築設計業務を外部に委託する場面では、契約前に確認しておくべきポイントや手続きに関する質問が多く寄せられます。

ここでは、現実的な運用を想定しながら、主要な疑問点をQ&A形式で解説します。

― 期待するレベルに達していなければ、契約を解除できますか?

― 期待するレベルに達していな
  ければ、契約を解除できますか?

契約の解除は、契約形態と契約書の定めによって異なります。

請負契約の場合は成果物の有無が基準となり、委任・準委任契約では「一定の業務を遂行したかどうか」が判断基準となります。

そのため、契約上は成果物の納品によってひとまず義務履行とみなされますが、内容に問題があれば修正や責任追及の対象となります。対応が完了すれば契約自体はそこで終了です。

また、委任・準委任契約では成果物より過程が重視されますが、業務遂行に問題があり品質低下や納期遅延が発生した場合などは契約違反として解除が認められます。

ただし「期待するレベル」という主観的表現だけでは不十分なことが多いため、契約時点で品質や成果物の完了基準を具体的に定めておく必要があります。

― 業務範囲が変わった場合、費用はどうなりますか?

― 業務範囲が変わった場合、
  費用はどうなりますか?

業務範囲が当初の契約内容を超えた場合、追加費用が発生する可能性があります。

特に建築設計業務では、修正や設計変更が発生しやすいため、どの業務を追加扱いとするかは契約段階で双方の認識を一致させておくことが重要です。

また、設計変更や追加業務が発生した時点で速やかに協議し、変更契約書や覚書を交わしておきましょう。

― 業務委託先はどのように見つければいいですか?

― 業務委託先はどのように
  見つければいいですか?

建築設計の業務委託先の候補は、以下の経路を活用してリストアップされることが多いです。
  • 同業者からの紹介
  • 業界団体の会員名簿
  • 専門のマッチングサービス
初めて依頼する場合は、小規模案件からスタートし、進め方・納期管理・コミュニケーションの精度を確認してから本格的な委託につなげる方法が有効です。
高品質な実施設計・図面作成の代行は
当社にお任せください
高品質な実施設計・図面作成の
代行は当社にお任せください
建築設計業務を外部に委託する場合、修正回数や業務範囲の解釈違い、連絡体制の乱れ、納期のズレなどにより、手戻りや追加費用が発生することがあります。

リスクを避けるには、実施設計や図面作成を安心して任せられる体制と実績を持つ委託先を選ぶことが重要です。

上岡祐介建築設計事務所では、共同住宅・福祉施設・倉庫・店舗など幅広い用途の実施設計業務に対応しており、豊富な実績と確かな対応力で安心してご依頼いただけます。
対応可能な図面
  • 平面詳細図
  • 矩計図
  • 階段詳細図
  • 建具配置図・外部建具表・内部建具表
  • 展開図
  • 天井伏図
  • 外構図
  • その他実施設計図面一式
当社の図面作成は、単なる作図作業ではなく、法的リスクや納まりの不具合が想定される場合には速やかに共有し、手戻りを抑えながら実務を進められる点が強みです。

また、省エネ計算についても2,573棟以上の実績があり、基本図段階からの計算反映、役所・審査機関との質疑応答、提出・受取の代行にも対応可能です。

ご依頼内容や建物規模、図面枚数に応じて納期・費用をご提案いたしますので、建築設計の委託先をお探しの場合は、まずはお気軽にご相談ください。
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