すでにご存知の方も多いかと思いますが、2021年4月より建築物省エネ法が一部改正されます。
国交省のホームページでも、法改正について学べるオンライン講座が開催されていますが、改正内容や新たに出てきた計算方法などは正しく理解されていますか?
「オンライン講座は知っているけど、どれを観たらいいか分からない」
「忙しくて、動画なんて観る暇がない」
「たくさんあるけど、これ全部観ないといけないの!?」
という方も多いのではないでしょうか。
そこで、お忙しい設計者様へ、限られた時間の中で必要な情報を取捨選択できるよう、上岡設計が動画の中で大事なポイントを抜き出してみました!
改正建築物省エネ法オンライン講座の講座内容とポイント
外皮性能の計算シートの選択
演習用建築物
- 木造2階建て(戸建て)
- 地域区分:6地域
- 構造:木造軸組み工法
- 断熱:床断熱構造
- 浴室の断熱:基礎断熱構造
建物構造・地域区分ごとにPDFシートがあるので、該当するPDFを選択する。(断熱構造によって計算シートを選択する。)
今回の演習問題では6地域の木造、床断熱+浴室は基礎断熱ということから、選択するモデル住宅法簡易計算シート(外皮)は ⇒シート番号:6-1-2となる。
※モデル建物法での一次エネルギー消費性能値の基準値はポイントで評価するため、参考までにモデル建物法の地域区分ごとの基準値を以下に記載しておきます。
木造の外皮性能の評価
外皮平均熱貫流率(UA値)の評価
- 一つの部位に複数の異なる仕様がある場合(外壁の断熱材の種類を方角によって変えている、等)は、最も大きな熱貫流率を記載すること。
- 窓によって仕様が異なる場合、サッシも上記同様。最も大きな熱貫流を記載する。 →断熱材やサッシの熱貫流率はカタログ等で調べて記入する。
- 土間床等の外周部(玄関・浴室)は線熱貫流率を補足資料(※以下参照)にて確認。
外皮計算は、各部位の熱貫流率や線熱貫流率と係数とのかけ算の結果を合計し、基準値と比較する。
結果の数値は小数点第4位以下を切り上げし、合計の数値は小数点第3位以下を切り上げする。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)の評価
- 外皮性能計算シートで入力した数値を利用。各部位の熱貫流率や日射熱取得率と係数とのかけ算の結果を合計し、基準値と比較。
- 結果の数値は小数点第4位以下を切り上げしますが、合計の数値は小数点第2位以下を切り上げする。
計算結果の数値が基準値以下になれば、冷房期の平均日射熱取得率ηAC値は基準値に適合していると判断される。
暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)の評価
- 外皮性能計算シートで入力した数値を利用。各部位の熱貫流率や日射熱取得率と係数とのかけ算の結果を合計する。
- 冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)の評価では、小数点第4位以下を切り上げていましたが、
暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)の評価では、結果の数値は小数点第4位を切り捨てし、合計の数値も小数点第2位以下を切り捨てする。
ηAH値は省エネ基準ではないので、適合判定は行いません。計算結果の数値は一次エネで使用します。
木造の一次エネルギー消費性能の計算シートの選択
演習用建築物設備仕様
- 暖冷房設備:主たる居室は、設置なし
- その他の居室は、設置なし
- 換気設備 :壁付け式第種換気設備
- 照明設備 :主たる居室は、白熱灯以外
- その他の居室は、白熱灯以外
- 給湯設備 :設置なし
今回の演習問題では空調設備機器の設置が無いため、選択するモデル住宅法簡易計算シート(一次エネ)は ⇒シート番号:6-エネ-1(設置なし)となる。
木造の一次エネルギー消費性能の評価
- 一次エネはポイントで評価する。
- 暖房設備については、外皮性能計算シートで算出したUA値(外皮平均熱貫流率)とηAH値(暖房期の平均日射熱取得率)の結果から該当するポイント数を確認し、シートに転記する。
- 冷房設備については、外皮性能計算シートで算出したUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)の結果から該当するポイント数を確認し、シートに転記する。
- 外皮性能計算シートで算出したηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)とηAH値(暖房期の平均日射熱取得率)の結果が該当するポイント数を確認し、シートに転記する。
- 設置する各種設備機器をチェックを入れてポイント数を確認する。
- 各設備のポイント数をシートに転記後、合計したポイント数が100ポイント以下になるか確認する。
- 合計したポイント数が100ポイント以下で一次エネルギー消費性能の基準に適合していることになる。
土間床等の外周部の線熱貫流率について
基礎及び土間床等の外周部の熱損失の評価方法が令和3年4月より変更となりました。
今までは土間床等の外周部と基礎の熱損失(立ち上がり高さ400mmまで)を合わせて評価していましたが、今後は土間床等の外周部の熱損失と基礎の熱損失は別々に評価することとなります。
モデル住宅法はBELSや性能評価には使用することはできませんが、上記で述べたように、どなたでも手軽に住宅の省エネ計算ができる点が最大の魅力です。
簡易計算になるため標準計算に比べるとどうしても数値の精密さは劣りますが、作業量が少なくすむので説明義務などでうまく活用していくと良いでしょう。
おわりに
国交省のオンライン講座は、建築物省エネ法の改正内容の理解を深めるためにあります。
このコラムを読んで業務に必要だと感じた方やオンライン講座を視聴したいと思った方は、国交省のホームページに詳しい解説動画がありますので、そちらをご覧ください。セミナーや講習会に行く時間のない人でも、オンライン講座ならあなたのリズムに合わせていつでも視聴可能です。
これを機に建築物省エネ法の知識を深めていきましょう。