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オフィスビルの省エネ設計はどう進める?
求められる水準と進め方を解説

オフィスビルの
省エネ設計は
どう進める?
求められる水準と
進め方を解説

コラム|オフィスビルの省エネ設計はどう進める?求められる水準と進め方を解説
コラム|オフィスビルの省エネ設計はどう進める?求められる水準と進め方を解説
建築業界では、省エネ化に向けた法改正や制度整備が進んでおり、省エネ性能の要求水準が段階的に引き上げられています。

オフィスビルの設計では、従来以上により高い水準の省エネ性能の確保が求められるようになっています。

ただし、オフィスビルの省エネ設計は、単に設備を高効率化すればよいというものではなく、建物全体の設備性能と運転条件を最適化することが求められます。あわせて、温熱環境や照明、空気環境といった「働く人の快適性」を確保する視点が欠かせません。

オフィスビルの省エネ設計で判断を誤らないためにも、意識すべき点を整理しておきましょう。
オフィスビルに求められる省エネ水準
オフィスビルに
求められる
省エネ水準
オフィスビルなどの非住宅建築物では、空調・換気・照明など設備にかかるエネルギー消費が建物全体のエネルギーの大半を占めるのが特徴です。

特に冷暖房や換気などの空調関連設備は、建物の延床面積や用途に応じて消費エネルギーが大きくなり、エネルギー消費全体に対して高い割合を占める傾向があります。

延床2,000㎡以上の大規模非住宅建築物と、300㎡以上2,000㎡未満の中規模非住宅建築物では、2021年4月から省エネ基準への適合が義務化されました。

さらに2025年4月以降は、これまで対象外だった300㎡未満の小規模非住宅についても省エネ基準への適合が義務化されています。
建築物規模ごとの省エネ適合・届出・説明義務の比較表(2025年改正前後)
オフィスビルの設計では、原則としてほぼすべてのケースで省エネ基準への適合が求められます。

― 新築・増改築でBEIの達成が原則

― 新築・増改築で
  BEIの達成が原則

オフィスビルの省エネ性能は、原則としてBEI(Building Energy Index)によって判断されます。

BEIは、設計一次エネルギー消費量を、基準一次エネルギー消費量で除した値(比率)です。数値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。

BEI = 設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量
省エネ性能
オフィスビルの新築や増改築では、BEIを基準値以下に抑えなければ、省エネ適判や建築確認申請が通らず、原則として着工に進むことができません。

意匠設計や設備設計の初期段階から、「最終的にBEIをどこまで下げられるか」を見据えて計画を立てることが、前提条件になっています。

非住宅建築物におけるBEI基準値(規模・用途別)

非住宅建築物におけるBEI基準値(規模・用途別)

非住宅建築物のBEI値は、建築物の規模と用途によって以下のように定められています。
規模区分ごとの用途と BEI 基準値の一覧表
小規模・中規模の非住宅建築物では、用途に限らず「BEI=1.0以下」が省エネ基準の適合条件です。

一方で、大規模非住宅建築物については、用途によって異なるBEI基準値が設定されています。特に事務所(オフィスビル)や学校、ホテル、百貨店などでは、BEI=0.8以下が基準となり、より高い省エネ性能が求められています。

― BEIの基準値は段階的な引き上げが見込まれている

― BEIの基準値は段階的な
  引き上げが見込まれている

政府は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、建築分野におけるさらなる省エネ性能の底上げを重要な課題と位置づけています。

中でも、エネルギー消費量の大きい非住宅建築物については、住宅以上に高いレベルでの省エネ対策が求められる状況にあります。こうした背景を踏まえ、非住宅建築物に適用されるBEIの基準値についても、今後は段階的に引き上げていく方針が示されています。

直近では2026年4月1日の施行を目安に、これまでBEI=1.0以下が基準とされてきた中規模非住宅建築物についても、将来的には大規模建築物と同様の水準へ引き上げられる予定です。
規模・用途別の BEI 基準値(2025年時点と2026年案)の比較表
オフィスビルのように、基本計画から竣工まで数年単位のプロジェクトでは「今出ている案件だから現行基準だけ見ておけばよい」とは言い切れません。

設計を始めるタイミングでは現行基準(BEI=1.0)が前提でも、建築確認申請や省エネ適判の時期が2026年4月1日以降にかかる場合、新しい基準値が適用される可能性があります。

そのため、延床2,000㎡未満の中規模オフィスであっても計画期間や申請時期によっては、BEI=0.8程度を見据えた設計にしておかないと、基準強化後に追加の設計調整や仕様変更が必要になるリスクがあります。

― 2030年を見据えてZEB化の動きが広がっている

― 2030年を見据えてZEB化の
  動きが広がっている

政府は、2030年度以降に新築される非住宅建築物について、原則としてZEB基準の水準の省エネ性能を確保する方針を示しています。
規模・用途別の BEI 基準値(2026年案と2030年目標)の比較表
オフィスビルの省エネ性能を左右する主な要素
オフィスビルの省エネ
性能を左右する主な要素
オフィスビルの省エネ性能は、特定の設備だけで決まるものではなく、以下の要素をどう組み合わせるかで大きく変わります。
  • 外皮性能
  • 空調設備の効率と制御
  • 換気方式と熱回収の有無
  • 照明設備と制御方式
  • 給湯・昇降機などの付帯設備
BEIは、これらの要素を総合的に評価する指標であるため、どこか一つだけを高効率化しても、全体としての省エネ性能が十分に確保できるとは限りません。

オフィスビルの省エネ設計では、各要素の役割と影響度を正しく理解したうえで、バランスよく性能を高めていくことが重要になります。

― 外皮性能

― 外皮性能

非住宅建築物の省エネ基準は、原則としてBEIによって評価されるため、外皮性能そのものが直接基準判定の対象になるわけではありません。

しかし実際には、建築物の一次エネルギー消費量が、外皮性能によって大きく左右されるため、省エネ設計において欠かせない要素です。

例えば、断熱性能が低く、開口部からの熱の出入りが大きい建築物では、冷暖房負荷が増大し、その分だけ空調エネルギーが増えてBEIが悪化しやすくなります。

BEIを小さく抑えるためには、設備の効率化だけに頼るのではなく、外皮性能も含めて一体で考える必要があります。

特にオフィスビルでは、窓面積が大きくなりやすく、方位や日射条件の影響を強く受けるため、断熱・開口部・日射遮蔽の計画次第で、冷房負荷に大きな差が生じます。

非住宅建築物の外皮性能はPAL*(パルスター)として数値化して把握できるため、設計段階で日射条件や開口部計画の妥当性を客観的に確認することが重要です。
株式会社上岡祐介建築設計事務所 » オフィスビルの省エネ設計はどう進める?求められる水準と進め方を解説

― 空調設備の効率と制御

― 空調設備の効率と制御

一般的なオフィスビルは、空調によるエネルギー消費量が建物全体の中で大きな割合を占めます。

エネルギー庁によれば、オフィスビルにおける消費電力(冬季)のうち、空調が33.5%と最も多くの割合を占めるため、空調設備の選定と制御計画がBEIを大きく左右すると言えます。

空調設備には、主に大規模建築で多く採用される中央熱源方式と、中小規模で主流の個別分散熱源方式に大きく分かれます。

中央熱源方式は、機械室などに熱源機を集約し、冷温水を各階の空調機へ送って空調する方式です。規模の大きい建物でも集中管理しやすい場合があります。

一方、個別分散熱源方式は、各階やゾーンごとに熱源を分散配置し、冷媒配管で直接空調する方式です。機器・制御方式によっては部分負荷効率の改善が期待でき、フロアやゾーンごとに細かな運転調整ができる点が特長です。
中央熱源方式と個別熱源方式の構成・メリット・デメリットを比較した図
いずれの方式も、熱源・熱搬送・空調機の各設備で構成されており、それぞれの効率と制御の良し悪しが、一次エネルギー消費量に直接影響します。

特にオフィス用途では、部分負荷運転の時間が長いため、部分負荷効率、台数制御、ゾーン制御、間欠運転まで含めた計画が、省エネ設計の重要なポイントになります。

― 換気方式と熱回収の有無

― 換気方式と熱回収の有無

オフィスビルの換気は、室内環境を保つために不可欠である一方、空調の省エネ性能に影響する要素でもあります。

一般的な窓開放や通常の機械換気では、室内の空気をそのまま外へ排出し、代わりに外気を取り入れることになります。外気を冷暖房する負荷が一次エネルギー消費量に上乗せされるため、BEIの値が上がる可能性があります。

外気負荷を抑えるには、全熱交換換気などを採用し、排気側の熱を回収し、給気側へ再利用することが有効です。夏は外気を予冷・除湿し、冬は予熱した状態で給気できるため、冷暖房エネルギーの増加を抑えながら必要換気量を確保できます。

結果として、一次エネルギー消費量の削減につながり、BEIの安定した改善が期待できます。

― 照明設備と制御方式

― 照明設備と制御方式

エネルギー庁によれば、オフィスビルにおける消費電力(冬季)のうち、照明の割合が29.8%と空調に次いで多くなっています。

そのため、照明器具の消費電力が大きくなればなるほど、そのまま年間のエネルギー消費量を押し上げる要因になります。

さらに、共用部や倉庫など常時使用しない場所では、人感センサーなどによって不要な点灯を抑える必要がありますが、あわせて「どの範囲を点灯させるか」「どの時間帯まで点灯させるか」といった制御もBEIに反映されます。

照明の発熱は室内の内部発熱として冷房負荷にも影響するため、照明計画は単なる明るさの設計ではなく、消費電力と発熱の両面を意識して検討する必要がある要素といえます。

― 給湯・昇降機などの付帯設備

― 給湯・昇降機などの付帯設備

オフィスビルでは、給湯設備・昇降機・ポンプ類などの付帯設備も、BEIに影響します。

例えば、給湯設備は、手洗いや給湯室が中心となるものの、電気温水器の待機ロスや常時加熱運転、過大な貯湯容量があると、実使用量以上にエネルギー量が計上され、BEIの悪化につながります。

昇降機は台数・積載量・速度・速度制御方式等に応じて一次エネルギーの算定対象となります。設置台数が多いほど待機電力が積み上がり、速度が高いほど運転時の消費電力も増加します。

付帯設備は一つひとつの消費電力は小さく見えても、台数・容量・運転方式・待機時間の積み重ねで大きくなります。「必要以上に大きくしていないか」「常時動かす前提になっていないか」という視点でBEIへの影響を確認しながら計画することが重要になります。
オフィスビルの省エネ対策と快適性の考え方
オフィスビルの
省エネ対策と
快適性の考え方
オフィスビルの一次エネルギー消費量は、各設備の性能値や運転条件が、数値として積み上がります。そのため、省エネ性能を高めるには、各要素の能力設定と運転条件を調整していく必要があります。

BEIに影響する各要素ごとに、設計者が意識しておくべきポイントは以下のとおりです。
省エネ設計におけるチェック項目一覧表(外皮・空調・換気・照明・付帯設備)
上記のチェック項目は、省エネ適判や確認申請の一次エネルギー計算で、数値条件として問われるポイントでもあります。

基本計画の段階では問題なく見えていても、実施設計で容量変更や運転条件の設定を誤ると、最終的にBEIが基準を満たさない可能性があるため確認が必要です。

― 省エネ性能だけを追いかけず、快適性とのバランスを取る

― 省エネ性能だけを追いかけず、
  快適性とのバランスを取る

省エネ設計では、BEIなどの数値目標の達成に意識が集中しがちです。

しかし、数値指標だけを過度に優先してしまうと、オフィス環境の快適性や働く人の生産性を損なうリスクがあります。
数値優先の設計リスクと快適性への影響を示した表
BEIの数値だけを優先した設計は、短期的には省エネ性能を満たしているように見えても、実運用では快適性や生産性の低下、クレーム増加、テナント満足度の低下といった別の課題を生みやすくなります。

オフィスビルの省エネ設計では、「BEIを下げること」と「働きやすい環境をつくること」はトレードオフではありません。両立させるべき設計条件であることを前提に、各設備の能力設定や制御を検討していくことが重要になります。
複雑なオフィスビルの省エネ設計は
専門家に任せた方が効率的
複雑なオフィスビルの
省エネ設計は専門家に
任せた方が効率的
オフィス用途を含めた非住宅建築物の省エネ設計は、設備点数が多く、運転条件も多岐にわたるため、BEIの算定や条件整理には高い専門性が求められます。

さらに、ZEBを見据えた計画や、BELS・CASBEEの認証、省エネ適判・補助金対応まで含めて進める場合、設計業務と並行するのは設計者にとって大きな負担となります。

オフィスビルの省エネ設計において、設計業務の負担軽減や確実なBEI達成を実現するなら、ぜひ当社にお任せください。

上岡祐介建築設計事務所は、個人事務所から大手設計事務所まで1,547社の支援実績があり、事務所やホテル、共同住宅をはじめとする幅広い用途の非住宅建築で、2,500件を超えるサポート実績があります。

省エネ計算だけでなく、省エネ適判、BELS、CASBEE、住宅性能評価まで一括対応でき、断熱範囲図の作成、軽微変更、事前検討までまとめてお任せいただけます。

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